令和6年9月定例会本会議にて一般質問を行いました

広島県議会令和6年9月定例会本会議にて一般質問をさせていただきました。今広島県が抱える問題を解決していくべく、中小企業支援、鳥獣害対策など6つのテーマで質問を行いました。

これからも住み良い広島県を実現していくために尽力してまいります。皆様からのご指導ご鞭撻をお願いします。

※こちらのページの質問内容は要約文章となっています。全文は下記の広島県議会ホームページよりご覧ください。

質問原文リンク:広島県議会 質問者別質問事項(山下 守)/外部サイト

1 中小企業の適切な価格転嫁に向けた環境整備について

広島県の中小企業では、物価高騰や人件費増大により、コスト増加を製品やサービス価格に反映させる「価格転嫁」が難しく、経営が厳しい状況です。県の調査によると、賃上げを実施した企業のうち、すべてのコストを価格に転嫁できた企業はわずか3.5%にとどまり、まったく転嫁できていない、あるいは1~2割しか転嫁できていない企業が7割以上にのぼります。このため、人手不足がさらに深刻化し、企業が縮小や廃業に追い込まれるリスクが高まっており、県経済全体に悪影響を及ぼす懸念があります。
現在、広島市や福山市には「価格転嫁サポート窓口」が設置されていますが、安易な値上げが失敗する例もあり、企業は原価把握や競合の動向を見極めながら慎重に対応せざるを得ない状況です。かつての高度成長期にはインフレとともに賃上げと価格転嫁が容易に行われましたが、長期のデフレを経験した現状では、消費者も企業も低価格志向が根強く、適切な価格転嫁には行政の積極的な支援が不可欠です。
そこで、県内中小企業が適切な価格転嫁を実現し、持続的な経済成長を目指すため、県としての現状と課題の認識、今後の取り組みについて知事の所見を伺います。

答弁者:湯﨑知事

経済の好循環には、適切な価格転嫁が不可欠であり、広島県では中小企業の価格転嫁率が約4割と低い現状が課題です。県は、国や経済団体と連携し、「パートナーシップ構築宣言」の普及促進に取り組み、宣言登録促進のためのセミナー開催や補助金の加点措置、原材料費上昇の根拠資料作成ツールの提供、労務費転嫁ガイドラインの普及を推進しています。また、国も補助金の加点や下請Gメンの調査指導などを実施し、経済団体も情報提供やセミナー開催で支援。今後も連携し、取引適正化を通じて県内経済の成長を目指します。

広島県の取り組み

・ 宣言制度の普及促進を図るセミナーの開催
・ 補助金の加点措置など、宣言登録の促進を図るためのインセンティブの付与
・ 価格交渉の際に必要となる、原材料費などの価格上昇の根拠資料を簡易に作成できる支援ツールの周知
・ 国の「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」の普及促進

国の取り組み

・ 省庁横断的な、補助金の加点措置の実施
・ 業界団体に対する労務費指針に基づく取組の徹底とフォローアップの要請
・ 下請Gメンの訪問調査を通じた改善指導

経済団体等の取り組み

・ 会員企業への情報発信
・ セミナーや講習会の開催

2 半導体産業を支える人材の確保・育成について

(1)半導体産業の人材不足への対策について

半導体は「産業のコメ」と呼ばれ、ロボット、自動車、生成AIなど幅広い分野で使用される基幹部品であり、我が国の産業競争力強化や経済安全保障の観点からも不可欠な存在です。デジタル技術の進展に伴い半導体市場は今後も拡大が見込まれており、国も「半導体・デジタル産業戦略」を策定し、国内生産拠点の確保やサプライチェーン強化に注力しています。本県ではマイクロン・メモリジャパン(三原市)や三菱電機、シャープの工場などが存在し、半導体産業は地域経済の重要な柱の一つです。しかし、半導体関連産業を支える人材不足が深刻であり、中国地方で現在約290人が不足し、今後10年で1,600人に達すると試算されています。特に研究開発職の不足が顕著で、生産技術職やオペレーター等の現場人材も大きな課題です。
 
こうした状況を踏まえ、広島県も含めた産官学が連携して「せとうち半導体コンソーシアム」を昨年3月に設立し、高度な専門知識を持つ中核人材の育成が進んでいますが、現場人材の確保にはまだ課題が残っています。現場人材を迅速に確保するには、各企業単独での取り組みには限界があり、他産業からの人材転換が有効な手段と考えられます。特に本県は製鉄業、造船業、自動車関連産業など、技術を持つ熟練労働者が多数おり、これらの人材を半導体産業に転換させるためのリスキリング環境整備が必要です。全国ではすでにリスキリング強化が進んでおり、例えば福岡県の「福岡半導体リスキリングセンター」では初歩から高度な技術習得まで対応する講座が全国からオンラインで受講可能です。
 
本県としても、独自の人材確保体制には時間がかかるため、先進自治体との連携を図りつつ、半導体産業が求める人材の早急な確保・育成を支援すべきと考えています。そこで、知事に対し、本県経済の重要な柱である半導体産業が抱える人材不足について、県内企業が直面する課題と、リスキリング環境整備など県としての具体的な取り組みについてお伺いします。

答弁者:湯﨑知事

半導体関連産業の成長が見込まれる中、広島県にはマイクロンメモリジャパン(三原市)をはじめ、三菱電機(福山市)、半導体製造装置のディスコやローツェ、材料分野のダイセルや三井化学といった多くの半導体関連企業が集積しています。これら企業の拠点強化や集積促進に向けて、県としても積極的に取り組んでいます。

現時点では、研究開発を担う専門人材は首都圏など全国から、工場運営を行うオペレーターは主に地元から採用できている状況ですが、半導体関連産業のさらなる成長を見据えた際には、人材不足が懸念されています。特に、高度な知識が求められる研究開発人材や技術職が将来的に不足する可能性が指摘されています。

このような状況を受け、中国地域半導体関連産業振興協議会では、大学や高等専門学校の学生を対象に、半導体企業による出前講座やインターンシップを実施し、次世代の半導体人材の育成に努めています。また、小中学生やその保護者を対象に、工場見学や半導体関連の体験講座も開催し、産業への興味を持ってもらう取り組みも進めています。

さらに、企業主導でリスキリングを推進することで、半導体など成長分野への事業展開に向けて、従業員が新たな知識・スキルを身につけられる環境作りも支援しています。高度技術や知識を持つ人材の確保については、広島大学が中心となり、産学官協働の「せとうち半導体コンソーシアム」を通じて、全国の企業人材や大学院生を対象に半導体製造、装置、材料といった幅広い知識や技術を習得するプログラムを提供し、昨年度は延べ約1,300人が受講しました。来年度以降は、このプログラムの定員をさらに拡大する予定です。

今後も、広島大学など関係機関と連携し、企業ニーズに応えた人材育成と確保にスピード感をもって取り組むことで、半導体関連産業の拠点性を強化し、本県経済の持続的な成長につなげてまいります。

(2)半導体人材の育成に向けた教育の推進について

広島県の半導体関連産業が国際的な競争力を維持・向上させるには、長期的視点で幅広い世代にわたる人材育成が不可欠です。特に小中高等学校の段階から、理系職業人材の育成を進め、持続的な半導体人材確保に繋げる必要があります。文部科学省の報告では、日本の理工系学部進学割合がOECD加盟国平均より低い17%に留まっており、理系離れが深刻な課題です。このため、学校段階から理系人材の育成に積極的に取り組むことが求められています。
例えば、小中学校ではロボット製作やプログラミングワークショップ、半導体関連企業の社会見学を実施し、実体験を通じて理系科目への興味を引き出すことが考えられます。また、専門家による授業や講演会を通じて、子供たちに理系分野の魅力を伝える機会を増やすことも重要です。熊本県では、県立技術短期大学に半導体技術科を新設し、小中学生向けに半導体への興味を促す動画や授業を提供するなど、理系分野の裾野を広げる取り組みが行われています。
高等学校段階では、県内の半導体関連企業との連携を強化し、学校での講演会や職場見学、インターンシップの提供などを通じて、具体的なキャリアパスを学生に示すことで、「目指したい」「働きたい」と思わせる環境を整えることが可能です。こうした取り組みを通じて、子供たちが主体的に理系進路を選び、県内の半導体関連企業での就職を目指す若者が増えることが期待されます。
しかし、現状では教育委員会としての具体的な目標やスケジュールが明確に示されていないことが懸念されます。今後、広島県教育委員会として市町教育委員会や地域企業と協力し、小中学校での理数分野への関心を高める取り組みや、高校での電子・化学分野等の専門人材の育成を推進し、早期から職業人材教育を整備することで、半導体人材確保に繋げる環境を積極的に整えて整備していく必要があると考えますが、教育長のご見解をお伺いします。

答弁者:教育長

AIやIoTの技術進展に伴い、次世代の科学技術人材の育成が重要であると考え、広島県教育委員会は小・中・高校を通じて理数教育の強化に取り組んでいます。小・中学校段階では「広島県科学賞」や「科学の甲子園ジュニア」を開催し、キャリア教育の指定校では産業界の専門家を招き、プログラミングや科学実験を行うことで、職業や産業への関心を高める取り組みを進めています。高校段階では、理数コースやスーパーサイエンスハイスクール指定校で探究プログラムを導入し、事実とデータに基づく仮説検証能力を養っています。また、国の高等学校DX加速化推進事業に採択された15校では、情報や数学教育に重点を置いたカリキュラムを実施するため、デジタル機器の環境整備を行っています。さらに、工業高校では、電子技術の授業を通じて半導体や電子回路の知識を学ばせ、普通科高校でも地元の半導体関連企業と連携し、見学や最新研究についての講座を開催しています。県教育委員会としては、小学校段階から科学技術に対する興味・関心を育むことを目指し、高校段階では企業との連携による実践的な教育を推進し、先端技術を支える高度な知識を持つ人材の育成につなげるための教育の充実を図ってまいります。

3 産業振興に資する道路網の強化について

広島県が半導体の世界的製造拠点として選ばれるための戦略的まちづくりについて、昨年度の知事の答弁では、道路インフラ整備や人材育成、生活環境の整備、地域企業とのビジネスマッチングに重点的に取り組む方針が示されました。また、国は「骨太方針2024」で、産業競争力強化や経済安全保障の観点から、半導体分野への国内投資を計画的に支援する方針を示しています。これを受け、県は昨年度から国の補助金を活用し、国道375号の4車線化や県道吉川西条線の拡幅など「道路整備計画2021」に基づく事業の加速を図っています。また、東広島市と連携し、将来の道路網の検討も進行中です。
東広島市の要望を踏まえ、入野地区の産業団地整備について年内に事業化の判断が予定されており、これは雇用促進による人口流出の抑制に寄与する施策と考えられています。したがって、産業振興を支える道路整備として、東広島本郷忠海線など現計画に位置づけられた箇所の整備推進を求めます。また、今後の成果を確実にするため、次期整備計画では、東広島市域の将来道路網の検討結果を踏まえ、県として中長期的な戦略を持つ必要があると考えられます。この点について知事の見解を伺います。

答弁者:湯﨑知事

半導体関連企業の拠点性強化や関連産業の集積には、用地確保や周辺道路などの社会インフラ整備が必要と認識されています。7月には、半導体生産拠点を有する6道県の知事が共同で、インフラ整備に関する別枠予算措置や地方負担軽減の制度支援を国に要望しました。本県では、国からの交付金を活用し、国道375号の4車線化などの整備を加速させ、早期完成を目指しています。東広島本郷忠海線については「道路整備計画2021」に位置付けられた区間の線形改良とアクセス強化を計画的に推進しています。さらに、国や市と協力し、半導体関連企業の設備投資や次世代学園都市構想を視野に、東広島市域の将来道路網を検討しており、次期整備計画にはこの結果を反映させ、中長期的視点で必要な事業箇所を検討していく方針です。今後も国や市町と連携し、産業振興を支える道路網の強化に取り組んでいきます。

4 地域特性を生かしたまちづくりの推進について

本県は少子化による人口・世帯数の減少と若者の転出超過が続き、人手不足が深刻化しています。県では、プロジェクトチームを設置し、若者減少や人手不足の要因を分析し、部局横断的に対策を進めています。これらの対策は喫緊の課題として重要ですが、中長期的には「選ばれる県」、「選ばれるまち」を目指し、地域特性を生かした魅力あるまちづくりが必要不可欠です。
東広島市では、「世界に貢献するイノベーション創造のまち」を目指し、「東広島市次世代学園都市構想」を策定しました。この構想に基づき、広島大学との「Town&Gown」連携を中心に、産学官の協力で学術研究機能や半導体関連産業の集積などを活かしたまちづくりが進められています。県も「ゆとりと魅力ある居住環境の創出モデル事業」のモデル地区の一つとして、東広島市の将来ビジョンの実現を支援しています。こうした地域資源を活かし、その特色を伸ばす取り組みは、社会情勢が刻々と変化する中で、県が「選ばれるまち」になるために大いに寄与します。
広島県全体では、「令和5年住宅・土地統計調査」によると空き家数が約23万戸、空き家率は15.8%と増加しており、人口減少が加速する中、低密度な市街地形成や都市のスポンジ化を防ぐことが求められています。これに対し、市町が策定する立地適正化計画では、都市機能の誘導や生活利便性の高い区域への居住誘導が掲げられています。これを基に、市街地再開発や空き家・空き店舗の活用を通じたエリアリノベーションが進められていますが、県としても地域の魅力向上につながる取組への積極的な関与が求められています。
今後、県としても国や市町と協力し、各地域の特性を生かしたまちづくりを進め、県内外の多様な人々にとって魅力的な居住環境を創出し、「選ばれる県」、「選ばれるまち」を実現するために戦略的かつ積極的に取り組んでいくことが必要です。

答弁者:答弁:都市建築技術審議官

本県は、急速な人口減少や少子高齢化、大都市圏への人口流出という厳しい社会情勢の中で、「選ばれる県・まち」を目指し、地域特性を生かしたまちづくりが重要だと認識しています。県は、中枢・中核都市における都市機能の強化を図るとともに、各地域で多様な主体と連携して地域の魅力を高める取り組みを進めています。令和3年度からは「ゆとりと魅力ある居住環境創出モデル事業」を通じて、東広島市、廿日市市、府中市の3つのモデル地区を支援しています。

東広島市では、広島大学周辺で「産学官の連携」により高度外国人材を誘致するグローバルスタンダードな生活環境づくりを推進。県も市と意見交換を行い、ビジョンの具体化を支援しています。廿日市市と府中市では、中心市街地の賑わい創出や、空き地・空き家を活用した魅力ある住環境の整備を進めており、こうしたモデル地区の手法や成果を県内全域に広げることで、ゆとりと魅力ある居住環境の創出を目指しています。

さらに、景観豊かな島しょ部や中山間部では、都市と自然の近接性を生かした空き家の活用が重要と考え、空き家ポータルサイト「みんと。」を運営し、空き家バンク情報や空き家活用事例を紹介しています。これにより、移住希望者に情報提供を行い、市町やNPO法人の空き家活用の取り組みを支援。また、ネットワーク構築にも力を入れ、移住促進のみならず、県外事業者のオフィス誘致や飲食・宿泊施設の開業を通じた地域活性化にも寄与しています。 今後も、県は地域の資源や強みを最大限に生かし、市町や地域と連携して地域特性に応じたまちづくりや居住環境の創出を進めることで、持続可能な地域づくりを推進し、県全体が「選ばれる」地域となるよう努めてまいります。

5 医療人材の適正配置について

県内における医療人材の偏在と配置の課題について、私は東広島市議会議員時代から深い関心を持っており、特に東広島市の現状では医師の確保が非常に困難な状況です。東広島市を含む広島中央二次保健医療圏域は、医師数が県内で最下位であり、人口規模が類似する呉圏域と比べても約1.7倍の格差があります。医師偏在指標も県内で2番目に低く、医療施設従事医師数も全国平均を大きく下回っています。この慢性的な医師不足は、二次救急病院群の輪番制においても当番日数の偏りを生じさせ、救急医療体制の維持に困難をもたらしています。
加えて、小児科医、麻酔科医、看護師などの不足も深刻であり、小児二次救急は1病院での対応に限られ、三次救急体制も未整備です。このため、東広島医療センターは急性期医療の中核として奮闘していますが、重篤患者は圏域外への搬送を余儀なくされ、地域完結型の救急体制は構築されていません。市では医師確保を支援するため、医療機関への補助金を交付し、広島大学に寄付講座を設置して小児科医や産科医の育成と診療体制の強化を図っています。
しかし、このような取り組みを進めているものの、地域全体での医療従事者不足は依然深刻です。県内では都市部と中山間地域、二次保健医療圏域間の格差が広がっており、今後の人口動態や医療環境の変化を見据えた持続可能な医療提供体制が求められます。限られた医療人材を効果的に配置し、地域間の偏在を是正し、患者の状態に応じた切れ目ない医療を確保することが喫緊の課題です。
県として、これらの現状をどのように認識しているか、また東広島市を含めた医療人材の適正配置に向けたこれまでの取り組みの評価と、短期的対応を含めた今後の計画について知事の見解をお伺いします。

答弁者:湯﨑知事

県内全域で安心して医療を受けられる体制の構築には、医療人材の適正配置が重要です。本県では保健医療計画を通じて二次保健医療圏ごとの状況を「見える化」し、医療関係者との連携で取り組んできました。具体的な対策として、大学地域枠や自治医科大学の医師の育成・配置、県外医師の中山間地域への招致、看護職員の養成所への助成、広島県ナースセンターによる職業紹介や復職支援、就職支援セミナーなどを実施しています。これにより、令和4年度には、人口10万人当たりの医師数は258.6人から272.6人、看護職員数は1,566.8人から1,628.6人へと増加しました。

ただし、診療科別にみると産科・小児科で医師不足が見られる圏域があり、大学地域枠において今年度から新たに小児科も指定診療科に加え、東広島市を含む圏域への配置を進めています。今後、県は医師配置調整委員会を本年度中に立ち上げ、地域の拠点病院を中心に医師の配置や循環を行う地域医療ネットワークの全圏域整備を進めます。

看護職員については、潜在看護職員の再就職支援を進めてきましたが、看護需要の増加に対応するため、今年度からナースセンターにおいて看護補助者への職業紹介を開始します。また、薬剤師の地域偏在解消のため、尾三圏域の病院と広島大学病院の人材交流事業を試行しています。県は国の医師偏在対策の動向を注視しつつ、引き続き関係者と連携し医療人材の偏在是正を図り、県内の医療提供体制の確保に努めます。

6 鳥獣被害対策を実現する中間支援組織の体制構築について

鳥獣被害対策を進めるための中間支援組織「テゴス」は、本県内で野生鳥獣による農作物被害の低減を目指し、鳥獣対策専門事業者の協力のもと、県内5市町の参画で設立され、令和6年度から本格的に稼働しています。東広島市内の県農業技術センターに設置されたテゴス本部を視察した際、私もその今後の取り組みに大きな期待を寄せました。
しかし、有害鳥獣の被害は拡大し、これまで被害が少なかった地域でも影響が顕著となり、各市町への相談件数が増加している現状です。例えば、私の地元である東広島市では、日に2から5件程度の相談が寄せられ、市職員が対応に追われています。このため、テゴスが市職員の業務負担を軽減できるか不透明なこともあり、東広島市はテゴス参画に消極的です。
テゴスは市町の有害鳥獣対策支援を目的として設立され、活動として柵の設置指導や未収穫果樹の除去などの環境整備指導が行われていますが、市町への業務支援についての具体的な成果はまだ見えていません。市町職員の負担軽減には、神戸市の「有害獣ヘルプデスク」のような中間支援組織が一次相談窓口となり、相談内容を仕分けする体制の構築が有効と考えます。また、高齢化により人手が不足している地域では、テゴスが人的支援を提供する仕組みも必要です。
今年4月までにテゴスや参画市町の協議で、農業者の現地指導や住民通報の対応などが取り組む事業内容として決まりましたが、具体的な技術提供や業務支援の成果がまだ不十分です。そこで、県として市町が抱える業務課題をどのように認識し、テゴスがどのような役割を果たせば市町が求める体制になると考えているのか、知事の見解をお伺いします。

答弁者:農林水産局長

市町では、職員の異動により専門知識の蓄積が難しく、シカやサルの生息域拡大への対応が困難であることが課題です。少人数で多様な業務を担い、職員の負担が大きい状況です。こうした課題解決のために、専任職員を育成し動物行動学に基づいた対策を展開し、市町全体へ広げる役割を持つ「テゴス」が、本年4月から本格稼働しました。5市町の参加後半年で、専任職員による現場対応により市町職員の負担軽減や企画業務への集中が可能となったとの評価が聞かれています。農作物被害が続く中、農業者の営農意欲を保つためには、新しい「攻めの対策」が必要です。テゴス専任職員はICT技術を活用し、地域住民と連携して被害を抑え、効果を実感できるよう取り組みます。県は、テゴスの活動を広く周知し、参加市町を増やし体制を強化していく方針です。